凹レンズログ

くりかえす生活の雑感。まとまらぬままに。

岡田監督と羽生さんの考える「ロジックとひらめき」の関係

Kindleストアでポチった元サッカー日本代表監督岡田武史と棋士羽生善治の対談本「勝負哲学」が非常にシビレる内容でした。勝負の世界の第一線しかもメディアでも名前が知られ逃げられない状況下で勝負をし続けてきた二人の言葉からはヒリヒリとした勝負の空気が伝わってきます。今回は、その中で語られる「ロジックとひらめき」の関係を中心にまとめてみようと思います。

勝負哲学

論理と直感

岡田 確たるものはきわめて少ないのが世の中というものですが、勝負ごとほど不確定要素にあふれている世界もめずらしいと思うんですよ。勝負においては、ロジックやデータを積み重ねれば積み重ねるほど、それだけではカバーし切れない、直感やひらめきというあいまいで非論理的なものの重要性が増していく。
その論理と直感の関係みたいなものをどうとらえるか。そのへんをまず、話の入り口にしたいと思いますが、どうでしょうか?

入り口からとてもとても密度の高い内容でしびれます。。ここから岡田監督はサッカー、羽生さんは将棋を題材に勝負の底深くに潜む理を読み解いていこうとしていきます。

岡田 防御は確率論で、相当程度カバーできるのです。ただ、攻撃はそうはいきません。攻撃を理屈でやると、すぐに相手に見破られてしまいます。・・・オフェンスには、データや確率、理屈を超えた要素が必要になってきます。・・・一定水準まではデータ重視で勝てる。しかし、確率論では勝ちきれないレベルが必ずやってくる。そうして、本当の勝負はじつはそこからだーそう言い換えてもいいかもしれません。 羽生 私もほぼ同じように考えています。将棋でも、一手目に何を指せばもっとも勝率が上がるのか下がるのか、そうした確率だけを追求していけば、そこそこのレベルまではいくと思います。しかし、その先の領域へさらに一歩を踏み出すためには、理論の延長ではなく、次元の異なる方法を考慮に入れなければなりません。
岡田 ただ、それが天から突然、降ってくるものではないことは確かです。・・・答えを模索しながら思考やイメージをどんどん突き詰めていくうちにロジックが絞り込まれ、理屈がとんがってくる。ひらめきはその果てにふっと姿を見せるものなんです。だから、その正体は意外なくらい構築的なもので、蓄積の中から生み出されてくるという感触がある。・・・ 羽生 直感によるオートフォーカス機能を信用して、直感が選ばなかった他の大半の手はその場で捨ててしまうんです。・・・でも、それはまったく偶然に何もないところじゃらパッと思い浮かぶものではなく、経験や蓄積の層を通して浮かび上がってくるものなんです。ですから、研鑽を積んだ者にしか「いい直感」は働かないんです。
岡田 蓄積とカン、経験と直感の関係はそういうものだと思います。つまり、直感はロジックを超えるものですが、同時に、ロジックによって支えられているものでもあるんですね。

二人の勝負師の対談を読んで、最も驚かされた部分は、とてもバランスの良い言葉を使ってくれるということです。「ヤマ勘とひらめきはどう違うのか?」「フェアプレーとお人好しは違う」など、ともすれば拡大解釈しやすい言葉や意味の取り違え、ニュアンスの伝わりにくさが生じる言葉も丁寧に紡いでくれます。
その他、リスクをどのように積極的に受け入れていくかという話しや、手を一度は必ず相手に渡さなければならない将棋における「他力」の考え方など、静かに淡々と語られているはずなのに、体の芯から熱くなっている感覚を覚える一冊でした。