凹レンズログ

くりかえす生活の雑感。まとまらぬままに。

有吉の最大の武器は、リアリティである

前々から気になっていた「嫌われない毒舌のすすめ」を読みました。読み始める前は、まさかこれほど衝撃を受けると思っていませんでした。有吉弘行、彼は、非常に優れたリアリストです。小説の中のエピソードを紹介しながらこの点に言及していきたいと思います。


社会通念ではなく、相手が実際にどう感じるのか?

宴会などの「無礼講」の時にどう振舞うか?ということについての有吉は以下のように説明します。

みんなが好き勝手に言える状況で、何か意見とかしてもインパクトがない(中略)他のみんなが文句とか不平不満を言ってるときに、自分だけは褒める。やっぱり、人の裏をかいていかないとダメです。

有吉が大切にしているのは、その状況にそぐうかそぐわないか?という視点ではありません。彼の行動選択の基準は、世間的な良し悪しを度外視して、「相手に実際にどう響くのか?」・・・その一点に集約されていくのです。自分のいる状況で、その人が話を聞く状況で、彼の耳にどう聞こえ、彼の目には何が映るのか?と相手の実感をつかんでいるのです。

有吉流、「人を動かす」

上司や目上の人に気に入られる方法については、有吉は以下のように提案します。

 相手がすきだなと思ってる人から、徐々に落としていけばいいんです。「あいつ、なかなかいいヤツですよ」みたいなことが周囲から伝われば、その人の見る目は確実に変わっていきます。

 他の人に、「こいつの口から言わせたい」とか、「この話、言って欲しいな」っていうとき、「言うなよ」は効きます。「言うなよ」って言うと、絶対に、「ここだけの話だけど・・・」って漏れますから。誰だって、「秘密を誰かにしゃべりたい」という欲求がありますからね。
 この作戦は、「イイ話」のときに使えますよ。イイ話の場合、「悪い話じゃないからいいだろう」みたいなユルいところがあるから、誰かにしゃべりやすいんです。(中略)
 「実は、俺、○○さんのこと尊敬してんだよ」みたいなこと言っといて、「言うなよ」と振っておけば、(中略)絶対に言います。そいつも、その人の機嫌を取りたいから、「イイ話をしよう」と思って、余計にしゃべりたくなるんです。(中略)
 誰だって、「また聞き」ってうれしいじゃないですか。(中略)間接的に聞かされた方が、リアルに褒められてる気がするんですよね。


有吉が見つめているのは、自分がいるその状況だけではないのです。人が現実的にどう動くのか?その場を離れた人は、今話題にしている人と出会ったときに「何を考える?」「何を欲する?」「どういう印象を与えたいと思う?」のだろうか。その相手の状態を考えると、今、何を口にすることが目も前の人間を動かすことに繋がるのか?彼はそう考えます。そしてそこには、恐ろしいほどの現実感が付随してくるのです。つまり、リアリティを持って先を予想できる、常人が考えるよりも、もう一手も二手も先の駒の動きを非常にディテールまで考えているのです。
よく彼を評するときに、その「観察力」が言及されることが多いです。しかし、モノマネ芸人の方々の多くも、同様にすぐれた観察力を持っています。芸人の中でもその観察力を売りにする人は多いですが、彼ほどのセルフプロディースに成功している人はいません。彼の生い立ちがそれを培わせたのか、浮き沈みを通る中で後天的に獲得されたのかは定かではありません。しかし、単に「観察力がある」という表現では、まだまだ過小評価であろうと思います。恐ろしいほどの現実感、リアリティ。それが彼の中にある。
毒舌を発する有吉、モノマネをする有吉、あだ名をつける有吉、本当にテレビで楽しませてもらっています。私は、かれの「現実感」に心を奪われて仕方がないです。